関西国際空港を拠点とするLCC(格安航空会社)「ピーチ・アビエーション」が今年3月、いよいよ国内2路線を開設する。関西空港就航のLCCは現在、海外6社10路線。これに国内初の本格的LCCが参入することになり、「LCC元年」ともいえる年を迎えた。巨額の債務と長引く航空不況に苦しむ中、LCC誘致に力を入れてきた関西空港が「第2の開港」へ羽ばたけるか--。ピーチ社は、期待と緊張感に包まれながら急ピッチで就航準備を進める。そして日本ではまだなじみが薄いが、「百聞は一見にしかず」とLCC路線を初体験した。
◆訓練ルポ
◇安全・信頼を運ぶ 品質維持へ懸命
「AIR PEACH9151,CLEARED FOR TAKE OFF RUNWAY 24 LEFT(エアピーチ9151便、滑走路24レフトから離陸を許可します)」
■パイロット
管制塔から指示が出た。機長席の田中利一さん(58)がエンジンをコントロールするスラストレバーを前方に進める。轟音(ごうおん)がつかの間機体を揺らし、あっという間に加速して浮き上がる。福岡へ向け、関西空港を離陸した。
待望の1号機=写真=が昨年11月に到着し、ピーチ社ではパイロットの訓練飛行が始まった。路線慣熟が目的で、就航予定地の福岡、新千歳のほか那覇にも飛ぶ。
新造機のコックピットは新車のにおいがする。安全祈願の成田山のお札も。エアバスA320はエンジン推力に余裕があり、乗客のいない分軽いせいか、軽快に上昇する。5分ほどで淡路島上空5400メートルに到達、強い西風に逆らいながら福岡を目指す。
小豆島を過ぎ、高度7300メートルで水平飛行に。広島市上空を通過して少しずつ高度を下げ雲を抜けると、博多湾の海岸線が目に飛び込んできた。福岡空港に着陸したのは約1時間後だった。
田中さんは大阪市出身。日本航空で「ジャンボジェット」の愛称で親しまれたボーイング747に30年間乗務した。副操縦士役を務めた井田邦夫さん(59)も日航OBで、技術指導や審査を担当する査察操縦士だった。
飛行時間は田中さんが1万5913時間、井田さんが1万4400時間で、いずれも国内の航空会社では「超」のつくベテラン。9月に入社してA320の資格を取得した後、国交省の機長認定審査にも合格した。
「新しい機種に移行するのは大変ですが、改めて空を飛べる喜びを感じています」と田中さん。井田さんも「安全性や定時性はもちろん、LCCの運航を預かる立場として何かできることがあると思う。第1便が飛ぶのが楽しみです」。
■整備士
フライトが終わると、駐機場で整備士たちが手際良く機体を点検する。整備部長の三國朝孝(ともたか)さん(47)は「A320は設計上の不具合は出尽くした機体で、安全性、信頼性は折り紙付き。LCCだからといって特別な整備はなく、品質を落とさずにやり方を変えることでコスト削減に努めます」と話す。【山田泰正】
■キャビン・アテンダント
客室乗務員(キャビン・アテンダント=CA)1期生は92人。第1グループ22人は、全日空の訓練施設で飛行機の構造や緊急時対応の基礎を学んだ後、12月に関西空港に戻り、客室サービスの実習を受けている。
第1グループの愛称が「桃1(ももいち)」。運航でCAをまとめるチーフパーサー要員でもある。荒本真麻(まあさ)さん(25)は電鉄会社から転身。「自分らしさを忘れず頑張りたい」と目を輝かせる。男性も2人。北川智規(とものり)さん(34)は留学経験もあり、海外の航空会社で働く男性CAの仕事ぶりに憧れて受験した。「乗客の安心感につながれば」と語る。
◇国内初、離陸へ準備万端
運航開始が目前に迫りました。大変楽しみであり、とてもわくわくしています。使用するエアバスA320は新造機。製造工場のあるフランスから既に2機が到着しています。運賃も発表し、パイロットや客室乗務員、整備士の訓練もスケジュール通りに進んでおり、第1便の離陸に向け準備は整いました。
「新しい航空サービスをつくり上げる」という理念に共鳴して集まった仲間たちはパイオニア精神にあふれ、課題を次々とクリアし、夢を現実させてくれました。パイロットや整備士はベテランぞろいで心強い限り。客室乗務員は例えるなら、「たばこ屋の看板娘」的な飾らない優しさを持った素晴らしい人材を採用でき、大いに期待しています。
日本初のLCCとして、高い安全性と質の高いサービスを提供して、関西の皆さんに可愛がっていただければと思います。(談)
◇関空、新時代へ アジアと日本の懸け橋に
関西空港はLCC乗り入れを成長戦略の一つに掲げ、積極的な誘致活動を展開している。空港2期島では、9機分の駐機スペースを備えたLCC専用ターミナルを整備中だ。
関西空港会社航空営業部の木下可奈子さん(30)は中国、韓国、台湾を担当。「関西地区は首都圏に次ぐマーケットとして、各国の航空会社の関心は高い。LCCの乗り入れが増え、交流が盛んになれば」と期待する。
大学卒業後、中国・長春の東北師範大学に1年間、語学留学。北京、大連で働いた経験もあり、得意の中国語を生かそうと入社した。空港内のお気に入りの場所は国際線出国ロビー。「旅立つ人たちの瞳はきらきら輝いていて、私も旅行に行きたくなります。関西空港がアジアと日本をつなぐ懸け橋になって、大勢のお客様に利用していただけるようになれば」と話す。
1月1日朝刊
(この記事は大阪(毎日新聞)から引用させて頂きました)
au 機種変更
◆訓練ルポ
◇安全・信頼を運ぶ 品質維持へ懸命
「AIR PEACH9151,CLEARED FOR TAKE OFF RUNWAY 24 LEFT(エアピーチ9151便、滑走路24レフトから離陸を許可します)」
■パイロット
管制塔から指示が出た。機長席の田中利一さん(58)がエンジンをコントロールするスラストレバーを前方に進める。轟音(ごうおん)がつかの間機体を揺らし、あっという間に加速して浮き上がる。福岡へ向け、関西空港を離陸した。
待望の1号機=写真=が昨年11月に到着し、ピーチ社ではパイロットの訓練飛行が始まった。路線慣熟が目的で、就航予定地の福岡、新千歳のほか那覇にも飛ぶ。
新造機のコックピットは新車のにおいがする。安全祈願の成田山のお札も。エアバスA320はエンジン推力に余裕があり、乗客のいない分軽いせいか、軽快に上昇する。5分ほどで淡路島上空5400メートルに到達、強い西風に逆らいながら福岡を目指す。
小豆島を過ぎ、高度7300メートルで水平飛行に。広島市上空を通過して少しずつ高度を下げ雲を抜けると、博多湾の海岸線が目に飛び込んできた。福岡空港に着陸したのは約1時間後だった。
田中さんは大阪市出身。日本航空で「ジャンボジェット」の愛称で親しまれたボーイング747に30年間乗務した。副操縦士役を務めた井田邦夫さん(59)も日航OBで、技術指導や審査を担当する査察操縦士だった。
飛行時間は田中さんが1万5913時間、井田さんが1万4400時間で、いずれも国内の航空会社では「超」のつくベテラン。9月に入社してA320の資格を取得した後、国交省の機長認定審査にも合格した。
「新しい機種に移行するのは大変ですが、改めて空を飛べる喜びを感じています」と田中さん。井田さんも「安全性や定時性はもちろん、LCCの運航を預かる立場として何かできることがあると思う。第1便が飛ぶのが楽しみです」。
■整備士
フライトが終わると、駐機場で整備士たちが手際良く機体を点検する。整備部長の三國朝孝(ともたか)さん(47)は「A320は設計上の不具合は出尽くした機体で、安全性、信頼性は折り紙付き。LCCだからといって特別な整備はなく、品質を落とさずにやり方を変えることでコスト削減に努めます」と話す。【山田泰正】
■キャビン・アテンダント
客室乗務員(キャビン・アテンダント=CA)1期生は92人。第1グループ22人は、全日空の訓練施設で飛行機の構造や緊急時対応の基礎を学んだ後、12月に関西空港に戻り、客室サービスの実習を受けている。
第1グループの愛称が「桃1(ももいち)」。運航でCAをまとめるチーフパーサー要員でもある。荒本真麻(まあさ)さん(25)は電鉄会社から転身。「自分らしさを忘れず頑張りたい」と目を輝かせる。男性も2人。北川智規(とものり)さん(34)は留学経験もあり、海外の航空会社で働く男性CAの仕事ぶりに憧れて受験した。「乗客の安心感につながれば」と語る。
◇国内初、離陸へ準備万端
運航開始が目前に迫りました。大変楽しみであり、とてもわくわくしています。使用するエアバスA320は新造機。製造工場のあるフランスから既に2機が到着しています。運賃も発表し、パイロットや客室乗務員、整備士の訓練もスケジュール通りに進んでおり、第1便の離陸に向け準備は整いました。
「新しい航空サービスをつくり上げる」という理念に共鳴して集まった仲間たちはパイオニア精神にあふれ、課題を次々とクリアし、夢を現実させてくれました。パイロットや整備士はベテランぞろいで心強い限り。客室乗務員は例えるなら、「たばこ屋の看板娘」的な飾らない優しさを持った素晴らしい人材を採用でき、大いに期待しています。
日本初のLCCとして、高い安全性と質の高いサービスを提供して、関西の皆さんに可愛がっていただければと思います。(談)
◇関空、新時代へ アジアと日本の懸け橋に
関西空港はLCC乗り入れを成長戦略の一つに掲げ、積極的な誘致活動を展開している。空港2期島では、9機分の駐機スペースを備えたLCC専用ターミナルを整備中だ。
関西空港会社航空営業部の木下可奈子さん(30)は中国、韓国、台湾を担当。「関西地区は首都圏に次ぐマーケットとして、各国の航空会社の関心は高い。LCCの乗り入れが増え、交流が盛んになれば」と期待する。
大学卒業後、中国・長春の東北師範大学に1年間、語学留学。北京、大連で働いた経験もあり、得意の中国語を生かそうと入社した。空港内のお気に入りの場所は国際線出国ロビー。「旅立つ人たちの瞳はきらきら輝いていて、私も旅行に行きたくなります。関西空港がアジアと日本をつなぐ懸け橋になって、大勢のお客様に利用していただけるようになれば」と話す。
1月1日朝刊
(この記事は大阪(毎日新聞)から引用させて頂きました)
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